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肛門の解剖と痔の関係
痔が起こるメカニズムをわかりやすく解説

目次

肛門の基本構造

肛門は排便という重要な機能を担う器官で、複雑かつ精密な構造を持っています。直腸の末端から肛門までの範囲には、粘膜層、血管層、筋肉層が層状に配置されており、それぞれが排便のコントロールや肛門の密閉に関わっています。

内痔静脈叢といぼ痔(内痔核)の関係

内痔静脈叢の構造と役割

内痔静脈叢は直腸側の粘膜下に存在する細い血管の集まりです。「叢(そう)」という言葉は草むらを意味し、細い血管が草のように密集して存在している状態を表しています。

この血管の集まりは肛門をしっかりと密閉するためのクッションのような役割を果たしています。肛門を閉じる際に血管が膨らむことで肛門のすき間を埋め、便やガスが漏れないように機能しているのです。

内痔核の発症メカニズム

内痔核は以下のような流れで発症・進行します。

1.うっ血の始まり

排便時のいきみ、長時間の座位や立位などで肛門部に圧力がかかり続けると、内痔静脈叢への血流が妨げられます。血液が滞る状態(うっ血)が始まります。

2.血管の拡張と組織の腫れ

うっ血が繰り返されると、血管が拡張して組織が腫れてきます。この段階ではまだ一時的な腫れで、原因が取り除かれれば元に戻ることもあります。

3.しこりの形成

腫れが繰り返されることで、次第に弾力が失われ、しこりのようになっていきます。この状態が内痔核です。

外痔静脈叢といぼ痔(外痔核)の関係

外痔静脈叢の構造と特徴

外痔静脈叢は肛門上皮の下に存在する血管の集まりです。内痔静脈叢と同様に、肛門を密閉するためのクッション機能を担っています。

内痔静脈叢との大きな違いは、外痔静脈叢の周囲には豊富な知覚神経が分布していることです。そのため、外痔核は痛みを伴いやすいという特徴があります。

外痔核の発症パターン

慢性的なうっ血

長時間の座位や立位など、継続的な圧迫により徐々に血流が滞り、時間をかけてしこりが形成されます。

繰り返す腫れ

うっ血により、一時的な腫れが繰り返されることで、次第に弾力が失われ、常態化した外痔核として残ることがあります。

肛門括約筋ときれ痔(裂肛)の関係

肛門括約筋の構造と機能

肛門括約筋は肛門の開閉を司る筋肉で、内肛門括約筋と外肛門括約筋の2層構造になっています。内肛門括約筋は無意識に働く不随意筋で、常に収縮して肛門を閉じています。外肛門括約筋は意識的にコントロールできる随意筋で、排便を我慢する時などに力を入れる筋肉です。

きれ痔(裂肛)の発症と肛門括約筋の関係

きれ痔(裂肛)は、硬い便の通過や下痢によって肛門上皮に裂け目ができる病気です。初期の裂肛は表面的な傷に過ぎませんが、痛みのために肛門括約筋が反射的に強く収縮するようになります。

肛門狭窄の形成メカニズム

1.裂肛の発症と痛み

硬い便の通過や下痢によって肛門上皮に裂け目ができます。排便時に強い痛みを感じるため、肛門括約筋が反射的に強く収縮するようになります。

2.傷の深化

血流不良により傷が治らず、繰り返す排便でさらに深くなっていきます。やがて傷が肛門括約筋にまで達するようになります。傷が筋肉に及ぶと、筋肉そのものが硬くこわばって、肛門が開きにくくなります。これが肛門狭窄です。便が細くなり、排便が困難になります。

3.痙攣と持続痛

さらに進行すると、筋肉が痙攣(けいれん)するようになり、排便後も長時間にわたって強い痛みが続きます。この痛みの恐怖から食事を控えるようになる方もおり、生活の質が大きく低下します。

歯状線と痔ろう・肛門周囲膿瘍の関係

歯状線の構造的特徴

歯状線は直腸と肛門の接合部に位置し、ギザギザとした形状をしています。実際に歯があるわけではありませんが、形が噛んだ時の歯形に似ていることから歯状線と呼ばれています。

直腸は腸管の粘膜で覆われており、肛門は皮膚に近い組織(肛門上皮)で覆われています。この異なる2つの組織が接合する歯状線付近は、構造的にも組織的にも弱い部分となっています。

肛門陰窩と細菌感染

歯状線のくぼみ部分を肛門陰窩と呼びます。この肛門陰窩は深さが数ミリあり、奥には肛門腺という分泌腺の開口部があります。通常はこの部分から粘液が分泌され、排便時の潤滑油のような役割を果たしています。

しかし、下痢などで便が柔らかくなると、肛門陰窩の奥深くまで便が入り込みやすくなります。便に含まれる細菌が肛門腺に侵入すると、感染を起こして炎症が広がります。これが肛門周囲膿瘍の始まりです。

痔ろう形成のメカニズム 

1.肛門周囲膿瘍の形成

細菌感染が進行すると、肛門周辺に膿が溜まります。

2.膿の排出

膿瘍が自然に破れるか、切開して膿を出すことで一旦症状は治まります。痛みや腫れが引くため、治ったように感じることもあります。

3.瘻管の形成(痔ろう)

細菌の侵入口である肛門陰窩と、膿の出口である皮膚表面がトンネルのような管(瘻管)でつながった状態になります。これが痔ろうです。

痔と解剖の関係表

原因疾患
内痔静脈叢のうっ血内痔核
外痔静脈叢のうっ血外痔核、中間痔核
肛門括約筋の緊張と痙攣裂肛の肛門狭窄、排便後疼痛
直腸 – 肛門接合部(歯状線)が脆弱痔ろう

よくある質問

なぜ痔は再発しやすいのですか?

痔が再発しやすい背景には、肛門の構造的な特徴があります。肛門クッションは排便のたびに圧力を受ける部位であり、歯状線付近は組織的に負担がかかりやすい場所です。そのため、排便習慣や生活習慣が改善されないままでは、同じ原因で症状が繰り返されることがあります。

当院では根本的な治療とあわせて、再発を防ぐための排便習慣・生活習慣の見直しについてもお伝えしています。

手術で肛門の機能は保たれますか?

当院の手術は解剖学的構造の温存を重視しており、肛門機能への影響を最小限に抑えています。括約筋温存手術や肛門クッションの過度な切除を避ける術式により、排便コントロール機能や密閉機能を保ちながら痔の根治を目指します。