痔 日 帰 り 手 術

痔核 痔瘻 裂肛手術
CO2レーザーメスを使用した
低侵襲手術を行います
低 侵 襲 の 手 術 の 指 標
術後の痛みが少ない | 手術時間が短い |
出血量が少ない | 麻酔時間が短い |
手術の傷(範囲)が小さい |
痔核根治手術(クランプトレーザー法+痔核郭清+ジオン注射併用)
麻酔は仙骨硬膜外麻酔ボーラス注入法 ❹ にておこないます。
ボーラス注入とは短時間に一定量の麻酔を注入する方法で、麻酔の立ち上がりが速く麻酔時間を短くすることができます。
手術はCO2レーザーメス ❶ を使用して、主痔核はクランプトレーザー法 ❷ にて切除します。その際の留意点は痔核を山に例えるならば6合目より上をクランプトレーザー法にて切除し、4合目以下はアンダーマイニング技術 ❸ にて副痔核と静脈叢をともに郭清 ❺ します。また奥の内痔核はジオン注射を併用します。
クランプトレーザー法により出血量が少なく(或いは無血)、アンダーマイニング手技にて小さな傷で手術を行うことができます。短時間で根治性の高い低侵襲手術が行えます。
痔瘻根治手術(肛門括約筋温存開放術 ダブルドレナージ法)
麻酔は仙骨硬膜麻酔ボーラス注入法 ❹ にておこないます。
一般的に痔瘻根治手術には「くり抜き法」と「開放術」があり適宜選択されています。
くり抜き法は括約筋を損傷しない利点はあるものの、開放術に比べて再発率が高く、一方開放術は括約筋を貫いた痔瘻には肛門括約筋の損傷(肛門機能低下)を考慮する必要があります。
当院では開放術とくり抜き法のそれぞれの利点を併せ持った肛門括約筋温存開放術 ❾ を行っています。この方法は括約筋を周囲組織より剥離し括約筋の上面と下面の両方にドレナージ創 ❽ をつくります。創は開放創ですが括約筋を損傷しない手術法です。私どもはこの方法で良好な手術成績を得ています。
裂 肛 根 治 手 術(裂肛瘢痕切除+肛門拡張+ジオン注射併用)
麻酔は仙骨硬膜麻酔ボーラス注入法 ❹ にて行います。
裂肛手術は裂肛部分を縫合閉鎖すると思っている人が多くいますが、裂肛は単純に縫合閉鎖し治る性質のものではありません。
慢性に経過した裂肛は裂けと治癒を繰り返すことにより、裂肛辺縁の組織が硬化肥大(瘢痕形成=周堤形成)し難治創(治癒が難しい状態)となります。またその過程で肛門狭窄を合併します。さらに進行すると排便後に括約筋の痙攣が起こり耐え難い痛みが一日中持続します。排便が恐怖となり食事の摂取障害にまで至ります。
この様な複雑な病態を持つ裂肛手術のポイントは難治創、肛門狭窄、肛門括約筋の痙攣、加えて肛門狭窄下にて排便を行っていたことによる内痔核の合併、これらに対するものとなります。
難治創に対して瘢痕組織を除去し創傷治癒に良好な傷に改善します(レーザーメスが有効)。肛門狭窄と括約筋痙攣予防に対しては肛門拡張術(オーバーストレッチ)を行います。内痔核はジオン注射を行います。
※当院では加齢時の肛門機能低下の危険因子と考えLSIS(内肛門括約筋切開術)は行いません。
低襲手術の技術と効果
CO2レーザーメス | → | 手術時間の短縮、組織損傷が少ない、出血量が少ない |
クランプトレーザー法 | → | 出血量が少ない、或いは無血 |
アンダーマイニング技術 | → | 手術創が小さい |
仙骨硬膜外麻酔ボーラス注入法 | → | 麻酔時間の短縮 |
痔核郭清 | → | 根治性の向上と術後の痛みの軽減 |
痔瘻括約筋温存開放術 | → | 肛門機能の温存 |
各種手術とジオン注射併用 | → | 手術範囲を小さく |
痔の手術 概念と技術
11のポイント
1 | CO2レーザーメス | 6 | 肛門括約筋の緊張緩和で肛門部痛を予防 |
---|---|---|---|
2 | クランプトレーザー法 | 7 | 手術中に肛門展開テープの伸展と緩和を適宜調節 |
3 | アンダーマイニング手技 | 8 | ドレナージ創は病変切除を行った後に作成 |
4 | 仙骨硬膜外麻酔ボーラス注入法 | 9 | 痔瘻括約筋温存開放術 |
5 | 痔核郭清という考え方 | 10 | 痔手術+ジオン注射の併用療法 |
11 | 手術後の安静の考え方 |
1. CO2レーザーメス〜2つの特徴〜


特徴1. フォーカスビームとデフォーカスビーム
フォーカスビームとは焦点のあった光線のことで組織損傷の少ない病変切除が行えます。一方、デフォーカスビームとは焦点のあっていない光線のことで止血能力の高い特徴を持ちます。照射病変との距離を変えることでフォーカスビームからデフォーカスビームまで無制限に調節(調合)ができます。病変の性質に合わせた照射で組織損傷や出血の少ない手術が行えます。
特徴2. 非接触性に病変を切除
レーザーメスは電気メスや一般的なメスとは異なり病変に接触することなくレーザー照射で病変を切除することができます。複雑に変化した裂肛周堤やスキンタグの切除、手術創の形成などに適します。
2.クランプトレーザー法(結紮切除)


クランプトレーザー法は血流の豊富な痔核病変を鉗子にて血流をクランプ(遮断)しレーザーメスを使用し痔核切除を行う痔核根治手術です。低侵襲で術後の痛みが少なく日帰り手術に適します。
3.アンダーマイニング手技


病変の上皮に切開を加え、皮下の病変のみを切除する技術です。痔核郭清に応用し主痔核の手術創を利用して副痔核の切除を行うことができます。手術創の小さい低侵襲手術を行うことができます。また根治性も上がります。
4.仙骨硬膜外麻酔ボーラス注入法

仙骨硬膜腔に麻酔薬を注入

ボーラス注入法とは薬物の濃度を効果的なレベルに上げるため短時間に薬物(麻酔薬)を投与する方法である。通常注入に比べ麻酔効果の立ち上がりが良く、また麻酔からの回復も早く麻酔時間が短縮された低侵襲麻酔です。
5.痔核郭清という考え方


郭清と言う言葉には病変を一掃し清らかにするという意味が込められています。
一般的に悪性腫瘍のリンパ節郭清などに使用されますが、痔核手術においても主痔核以外の副痔核や痔核の原因となる静脈叢を含め、一掃するといった考えで(意識で)私どもは手術を行っています。痔核郭清を行うことにより根治性の高い手術となります。また、術後創の腫脹が少なくなり術後の痛みが大幅に軽減されます。
6.肛門括約筋の緊張緩和で肛門部痛を予防


肛門の痛みは肛門括約筋の緊張によって起こります。さらに緊張し括約筋の痙攣が起こると耐え難い痛み(疼痛)となります。
肛門括約筋の緊張の緩和が肛門部痛の軽減につながります。
術中に肛門括約筋群(外肛門括約筋、内肛門括約筋、臀部筋肉など)を過伸展することにより、術後の括約筋の過度な緊張や痙攣を予防でき、術後の肛門部痛は著しく軽減します。
7.手術中に肛門展開テープの伸展と緩和を適宜調節


一般的な肛門手術は手術野を得るために展開テープを肛門の左右に貼り、これを強く引っ張ることで肛門が開いた状態で行います。そのため本来の肛門の形でない状態で手術を行うこととなります。当院では手術中に展開テープを適宜に伸展と緩和を繰り返すことにより本来の肛門の形をイメージして手術を行います。手術創を肛門が閉じる際のシワに合わせた創とすることができ、創傷治癒、治癒後の創の美観においても有用です。
8.ドレナージ創は病変切除を行った後に作成
手術創は縫合閉鎖されるのが一般的ですが、肛門手術は翌日から排便を行うため、創が汚染されるため開放創(縫合閉鎖しない)とします。さらに肛門内の浸出液が肛門の外に排出(ドレナージ)されるように、創は肛門内から外縁までつながった形とします。これを肛門手術のドレナージ創と呼びます。
ドレナージ創の出来不出来は術後創傷治癒を左右します。通常の痔核手術は肛門外縁から切除を始め肛門内にある痔核を切除するのに対して、当院では肛門内の痔核の切除を行った後、その創を外縁まで延長する形でドレナージ創を作ります。この方法はドレナージ創を肛門の閉まる際のシワに合わせることができ創傷治癒や創の美観的においても優れていると考えています。
9.痔瘻括約筋温存開放術
(ダブルドレナージ法)
痔瘻手術には瘻管を切開する開放術と瘻管をくり抜くくり抜き法があります。開放術は根治性は高いが肛門の機能を損傷する可能性があり、またくり抜き法は括約筋は温存されますが再発がしやすいと言う短所があります。そこで当院では手術創は開放創としますが、括約筋の裏面を剥離し括約筋の上面と下面にドレナージ創を設け、括約筋を温存できる痔瘻括約筋温存開放術(ダブルドレナージ法)を行って良好な成績を得ています。
10.痔手術+ジオン注射の併用療法
手術とジオン注射を併用することにより、手術範囲を縮小でき手術侵襲の少ない手術が可能となります。また根治性も上がります。
11.手術後の安静の考え方
術後安静の考え方も以前とは大きく変化しています。消化器外科、整形外科、脳神経外科、多く診療科で早期離床が行われています。肛門科も同様です。日常生活を通常通りに行うことが早期のリハビリとなり良好な術後経過を導くと考えます。当院では肉体労働を含め、翌日からの仕事に制限を行っていせん。
術後について
手術翌日から仕事ができます
術後の痛み
低侵襲手術にて術後の痛みを大幅に軽減できました。また、日常生活を通常通りに行うことが良好な術後経過を導くと考えます。当院では肉体労働を含め、翌日からの仕事に制限を行っていせん。
低侵襲手術の技術と効果 を参照
術後の合併症
様々な工夫(クランプトレーザー法、アンダーマイニング手技、ジオン注射併用など)による低侵襲手術にて、術後合併症のリスクは大幅に軽減しています。当院の発生率は1000分の1以下です。
低侵襲手術の技術と効果 を参照
術後の安静
術後も通常どおりに生活をすることが、肛門のリハビリになり、術後の経過を良好にすると考えます。普段行っている仕事は肉体労働も含め制限を行っていません。
※ アルコールと香辛料の摂取は2週間控えていただいています。
術後の対応
手術後は医師による電話対応を行っています。術後の疑問や問題に対して、速やかに対応ができます。
地 図
新宿三丁目駅C5出口から徒歩0分
平生ビル6F