まず薬での治療から始めます
肛門科を受診される患者様の約8割は、生活習慣の見直しと薬による治療で症状が改善します。「受診したらすぐ手術」ということはなく、まずは体への負担が少ない薬での治療から検討していただけます。
当院では、痔の種類・症状の進行度・基礎疾患・体質などを丁寧に確認したうえで、薬を組み合わせて処方しています。市販薬との違いや、どのタイミングで手術を検討すべきかについても、診察時にわかりやすくご説明します。
処方する薬の種類
外用薬(肛門に直接使うお薬)
肛門周辺に直接作用する薬で、炎症・出血・痛みを抑えます。妊娠中・授乳中の方にも使用できる薬剤を処方しています。
注入軟膏剤 肛門の中に直接注入するタイプの薬です。痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)に使用します。患部に直接届くため、効果が出やすい剤形です。
座薬(坐剤) 弾丸型の形状で、肛門内に挿入して使用します。注入軟膏と同様に痔核・裂肛に適しており、就寝前などに使いやすい剤形です。
塗布剤(軟膏) 肛門のまわりの皮膚に塗って使います。かゆみや皮膚の炎症が気になる方に処方します。
内服薬(飲み薬)
外用薬と組み合わせることで、より効果的に症状にアプローチします。
消炎・鎮痛剤
肛門の痛みを和らげます。排便時・排便後の痛みが続く裂肛などに処方することが多くあります。また、 痔核・裂肛・痔ろうの炎症を落ち着かせます。腫れや熱感が強い時期に使用します。
抗生物質
化膿を抑えます。肛門周囲膿瘍や痔ろうに使用します。
整腸剤
腸内環境を整え、排便を安定させます。下痢や軟便が続く方にも適しています。
便秘薬
硬い便は裂肛の悪化や、いぼ痔の出血を引き起こす原因になります。便の状態を整えることが、症状の改善と再発予防につながります。
漢方薬
痔核・裂肛・痔ろうのさまざまな症状に対応できます。なかでも芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、市販薬にはない「肛門の過度な緊張を和らげる」効果があり、排便時の痛みや裂肛の改善に役立ちます。
痔の種類別|薬で治るケース・手術が必要なケース
同じ「痔」でも種類によって、薬で対応できる範囲はかなり異なります。それぞれの目安を知っておくと、治療に対する不安が少し和らぐと思います。
痔核(いぼ痔)の場合
内痔核の1〜2度は、出血や軽い脱出がある段階です。この時期であれば、外用薬と内服薬の組み合わせ、または生活習慣の改善で症状が落ち着くケースが多くあります。ジオン注射(硬化療法)という注射による治療も、手術を避けたい方の選択肢になります。
一方、3度以降になると痔核が排便時に脱出して自力では戻らなくなります。薬で炎症を抑えることはできても、根本的な解決にはなりにくく、手術を検討する段階です。4度は常時脱出している状態で、粘液が染み出て下着が汚れるなど生活上の支障も大きくなります。
嵌頓(かんとん)痔核は、脱出した痔核が括約筋に締め付けられて戻らなくなった状態で、強い痛みと腫れを伴います。この場合は速やかな対処が必要です。
裂肛(切れ痔)の場合
急性裂肛は、硬い便などによって一時的に肛門が切れた状態です。出血と排便時の痛みが主な症状で、便秘薬や外用薬などで多くの場合改善します。
ただし、繰り返すうちに傷が深くなり慢性化すると状況が変わります。慢性裂肛の中期では、排便後も痛みが続くようになります。後期・晩期になると肛門が狭くなり(肛門狭窄)、通常の排便ができなくなるほか、痛みへの恐怖から食事を避けるようになる方もいます。こうなると薬だけでの改善は難しく、手術が必要です。
裂肛は「たかが切れ痔」と放置されがちですが、進行すると日常生活への影響が大きくなります。排便後の痛みが30分以上続くようであれば、一度ご相談ください。
痔ろうの場合
痔ろうは、肛門の内側と外側をつなぐトンネル状の管(瘻管)ができた状態です。残念ながら、薬だけで完治させることはできません。抗生物質で炎症や膿を一時的に抑えることはできますが、管そのものがなくならない限り再発を繰り返します。根治には手術が必要な疾患です。
「薬を飲んでいたら症状が治まった」と受診が遅れるケースがありますが、その間に瘻管が複雑化することがあります。早めに診断を受けておくことが、その後の治療をシンプルにすることにつながります。
薬が効かないときのサイン|受診・治療変更のタイミング
薬による治療は、一般的に約1週間を目安に効果を確認します。以下のような状態が続く場合は、治療法の見直しが必要なサインです。
こんな症状が続いたら受診を
- 薬を1週間使っても出血・痛みが改善しない
- 排便のたびに痔核が脱出するようになってきた
- 排便後も痛みが1時間以上続く
- 肛門のまわりが急に腫れて、熱感・拍動するような痛みがある(肛門周囲膿瘍の可能性)
- 薬を続けているが症状が繰り返す
特に「肛門のまわりが急に腫れて熱がある」という状態は、肛門周囲膿瘍といって膿がたまっている状態です。放置すると痔ろうに進行するため、できるだけ早めにご来院ください。
また、市販薬で症状を抑え続けることで、別の病気(大腸ポリープや大腸がんなど)を見逃すリスクもあります。血便が続く場合は、大腸カメラ検査もあわせてご相談いただけます。
手術を急がなくていい、という安心感
「受診したらすぐ手術と言われるのでは」と不安で受診をためらっている方は少なくありません。当院では、手術が必要かどうかを診察で丁寧に見極め、治療の選択肢をお伝えしたうえで患者様自身に選んでいただく方針です。
薬での治療が有効な段階であれば、まずそこから始めます。効果が不十分な場合は、ジオン注射や日帰り手術という次の選択肢を一緒に考えます。どの段階でも、「なぜその治療が必要か」を写真や画像を用いてわかりやすく説明するよう努めています。
JR八王子駅から徒歩6分。神奈川・山梨・埼玉からも通院しやすい立地です。まずは相談だけでも、お気軽にご予約ください。