詳細クランプトレーザー法

本コンテンツは、もともとは医療従事者向けに書かれた内容のため、一般の方にとってはやや専門的に感じられる部分があるかもしれません。 しかし、読み進めていただくことで、クランプトレーザー法が、これまでの治療の歴史を踏まえつつ、現在の医療技術を結集して完成された、非常に質の高い手術法であるということをご理解いただけるはずです。
「なぜこの手術法がつくられたのか?」
「従来の治療と何が違うのか」

そんな疑問を持ちながらお読みいただくことで、クランプトレーザー法の本質や価値を、より身近に感じていただける内容となっています。
Contents
1.クランプトレーザー法 ▶︎

−痔核手術の未来を切り拓く標準術式として−
パークス法を継承・進化させたクランプトレーザー法

2.クランプトレーザー法の理論的背景と臨床的有用性 ▶︎

CO₂レーザーを用いた痔核切除.郭清手術と硬化療法(ALTA)を併用した手術。 日帰り手術のために開発された低侵襲痔核根治手術・クランプトレーザー法

3.クランプトレーザー法におけるドレナージと創傷治癒 ▶︎

― 肛門手術創に対する新たな治療概念 ―

4.「マリリンの唇」 ▶︎

クランプトレーザー法の特徴的な手術創
開放創なのに閉鎖している

5.CO₂レーザーメスと電気メスにおける組織損傷の質的差異▶︎

エネルギー伝達様式および創傷治癒への影響

1.クランプトレーザー法

−痔核手術の未来を切り拓く標準術式として−
パークス法を継承・進化させたクランプトレーザー法

1.1 パークス法とクランプトレーザー法に共通する基本概念

クランプトレーザー法とパークス法は、痔核を「皮膚・粘膜下層に存在する病変」と捉える点において、同一の基本概念を共有している。この概念は、1958年に天才外科医と称された"パークス(Parks)"によって提唱されたものであり、痔核の本質を正確に捉えた、きわめて理想的な発想であった。すなわち、皮膚や粘膜を共に切除するのではなく、皮膚粘膜下層に存在する痔核病変のみを確実に除去すればよいという考え方である。

1.2 理想的でありながら普及しなかったパークス法の限界

パークス法は概念としては正しかったものの、当時は十分な止血デバイス(医療機器)が存在しなかった。
そのため、
・術中・術後の止血管理が極めて困難
・術者の技量による仕上がりのばらつきが大きい
・パークス本人は実施できても、他の外科医には汎用化できない
という問題を抱えていた。結果として、"「理論的には優れているが、誰にでも行える手術ではない」と評価された。1938年に確立されたミリガン・モルガン法(高位結紮切除術)"が、より現実的な選択肢として標準術式の地位を占めることとなった。 現在の日本の標準手術はミリガン、モルガン法変法:結紮切除(主に半閉鎖)である。

1.3 手術デバイスの進化がもたらした転機:クランプトレーザー法の誕生

パークス法が提唱されてから約30年後、 我々は、血流を遮断する「クランプ」という発想と、組織侵襲の少ないCO₂レーザーメスを組み合わせ、さらに当時存在しなかった硬化療法(ALTA:ジオン注射)を併用することで、安全性と汎用性を高めたクランプトレーザー法という新しい手術法を発案した。
CO₂レーザーメスは、
・適切な止血能
・周囲組織への熱損傷が極めて少ない
・フォーカスビームによる精密な剥離操作
といった特性を有している。特にフォーカスビームを用いることで、皮膚粘膜下層の剥離が容易となり、真皮層が露出されたことを意味する「白い壁(ホワイトウォール)」という明確な指標が得られる。これにより、痔核病変のみを確実かつ安全に剥離・除去することが可能となった。

1.4 アンダーマイニング手技による痔核郭清の完成度の向上

クランプトレーザー法では、余剰な皮膚.粘膜は痔核(中央部)とともに切除し、残存する痔核(側方)は痔核郭清によって除去する。その際に用いられるのが、 "皮膚・粘膜を温存し、皮膚粘膜下層の痔核のみを剥離・切除する「CO2レーザー:フォーカスビームによるアンダーマイニング手技:痔核郭清」"である。
この手技により、
・根治性が向上
・術後の腫脹が軽微で痛みが軽減
・良好なドレナージと早期創傷治癒が両立
・肛門の自然な形態と機能が保たれる
といった効果が得られる。

1.5 汎用性と再現性を備えた現代的術式へ

皮膚粘膜下層の剥離には一定の外科的技術を要するが、CO₂レーザーという明確なデバイスと視覚的指標の存在により、 この術式は比較的短期間(約半年程度)のトレーニングで習得可能である。実際に、本術式は多くの医師に指導してきたが、 高度な熟練を要さず、術者間の仕上がりのばらつきも少ない。これは、 「パークスにはできたが、他の医師にはできなかった手術」 という歴史的課題を、現代の技術によって克服したことを意味する。

1.6 クランプトレーザー法の未来

クランプトレーザー法は、
・痔核の本質を正しく捉えた基本概念
・低侵襲で安全性の高い手術デバイス
・高い再現性と汎用性
・日帰り手術を可能とし、翌日から仕事制限を要しない術後QOL
を兼ね備えている。これらの点から、クランプトレーザー法は、今後の痔核手術における「標準術式」となるべき素因を十分に有していると考える。

2.クランプトレーザー法の理論的背景と臨床的有用性

「CO₂レーザーを用いた痔核切除.郭清手術と硬化療法(ALTA)を併用した手術。 日帰り手術のために開発された低侵襲痔核根治手術・クランプトレーザー法」

2.1 背景(Background)

痔核手術は、その治療概念から"「破壊系治療」と「切除系治療」の大きく二つに分類される。現在、痔核根治術の標準術式として広く行われているのはミリガン・モーガン法(結紮切除術)"であるが、本術式は確実な根治性を有する一方で、術後疼痛・出血・入院管理を要する侵襲性の高さが問題とされてきた。 近年、社会構造の変化や医療ニーズの多様化に伴い、日帰り手術、低侵襲手術(※)、早期社会復帰繧貞を可能とする新たな痔核根治術の開発が強く求められている。
※ 低侵襲手術の3つの要素
1.手術時間が短い 2.出血量が少ない 3.切除範囲が少ない 4.麻酔の侵襲が少ない。5.術後の痛みが少ない 6.創が小さい

2.2 理論的背景(Concept)

痔核は従来、粘膜病変として捉えられてきたが、 "Parks(1958)"は「痔核は皮膚・粘膜下層に存在する病変である」という概念を提唱した。この理論は解剖学的・病態生理学的に極めて合理的であったものの、当時は皮下・粘膜下層を精緻に処理する手術機器および技術が未成熟であったため、 高い技術的難易度が普及の障壁となり、臨床応用は限定的であった。クランプトレーザー法は、このParksの理論を基盤とし、 CO₂レーザーという精密制御可能なデバイスを用いることで、 皮下・粘膜下層病変を安全かつ低侵襲に処理することを可能とした新しい痔核根治術である。

2.3 手術手技(Surgical Technique)

2.3.1 手術コンセプト

クランプトレーザー法は、以下の3つの治療要素を統合した超.ハイブリッド手術(※)である。
※ 痔核切除+ALTAの2つの治療の併用療法をハイブリット手術と呼ぶ。

2.3.2 痔核切除(中央部)

痔核中央部の病変を、余剰皮膚・粘膜とともに鉗子で把持し血流を遮断(クランプ)する。 その後、CO₂レーザー・デフォーカスビームを用い、歯状線より約5mm口側まで切離を行い、痔核根部を結紮切除する。
クランプ操作とデフォーカスビームの併用により、出血を最小限に抑えつつ、安全な切離が可能となる。

2.3.3 痔核郭清(両側方部)

中央部の切除創より、両側方に残存する痔核病変に対し、CO₂レーザー・フォーカスビームを用いたアンダーマイニング手技により、皮下・粘膜下層の痔核組織を郭清する。
→これにより、肛門上皮・粘膜の温存と形態保持が可能となる。

2.3.4 硬化療法(下部直腸部)

下部直腸に存在する病変に対しては、ALTA(ジオン注)を約3~5mL注入し、 炎症性線維化による病変固定・縮小を図る。
→切除・郭清・硬化療法を病変部位ごとに使い分ける点が本術式の大きな特徴である。

2.3.5 クランプトレーザー法に特徴的な手術創

本術式の手術創は開放創であるが、 肛門が閉鎖している状態では創縁が軽く接する程度に自然閉鎖される構造を有している。一般に外科学においては、感染創、あるいは感染が予測される創に対しては、十分なドレナージを確保する目的で開放創とすることが原則とされている。本術式における手術創は、この外科学的原則を踏まえつつ、肛門閉鎖時には創面が過度に離開することなく軽度に接することで、 排液路を確保しながらも、創傷治癒を妨げない形態を実現している。その結果、 "「良好なドレナージ」と「早期創傷治癒」"という、従来は相反すると考えられていた二つの命題を、同時に満たすことが可能となった。

2.4 結果(ClinicalOutcomes)

(2023年11月23日 日本大腸肛門病学会 発表)
対象:2006年~2022年3月
症例数:1,532例
術後疼痛92.8%が「強い痛みなし」
術後出血合併症0%
社会復帰までの期間翌日社会復帰、99.7%
日帰り手術の可否全例において日帰り手術が可能

2.5 考察(Discussion)

クランプトレーザー法は、 従来の結紮切除術と比較して著しく侵襲を低減しながら、根治性を維持することが可能であった。
特に、
・出血制御
・疼痛軽減
・創傷治癒の促進
という点において、CO₂レーザーと病変部の特性を知り、3つの治療を組み合わせたことにより*低侵襲の6つの指標を達成することができたためと考える。
(麻酔の侵襲が少ないについては、上記文章で記載していない)本術式は、切除・郭清・硬化療法を統合した "「*超ハイブリッド痔核根治術(※)」"として位置づけられる。
※ ハイブリット手術は切除+硬化療法

2.6 結論(Conclusion)

低侵襲性、日帰り手術、早期社会復帰を目指して開発されたクランプトレーザー法は、 今後の痔核根治手術において、新たなスタンダード術式となり得る可能性を有すると結論した。

2.7 今後の課題(FuturePerspectives)

本術式の安全かつ正確な普及のためには、
・CO₂レーザーのフォーカス/デフォーカスビーム操作
アンダーマイニング手技
・日帰り手術に最適化された麻酔管理
といった技術指導が不可欠である。今後は、手術動画・写真を用いた教育コンテンツの発信や、 "「クランプトレーザー法ワークショップ」"の開催を通じて、標準化と技術普及に努めていく必要がある。

3.クランプトレーザー法におけるドレナージと創傷治癒

― 肛門手術創に対する新たな治療概念 ―

3.1 はじめに

肛門手術後の創部は、排便という不可避な生理現象により、常に細菌汚染環境に曝露されるという特異性を有する。そのため、肛門手術創は本質的に感染リスクを内包した創と考えられてきた。このような背景から、外科学の原則として、感染創あるいは感染の可能性が高い創は開放創とすることが長らく基本とされてきた。一方で、創傷治癒の観点からは、開放創には以下のような問題点が指摘されている。すなわち、治癒までに時間を要すること、術後疼痛を生じやすいこと、ならびに瘢痕形成を来しやすいことである。特に肛門部における瘢痕形成は、整容的問題にとどまらず、肛門の開閉機能や伸展性に影響を及ぼす可能性がある。一般的な創傷治癒理論においては、創は閉鎖されている方が早期治癒に有利であるとされており、肛門手術後には常に
① 十分なドレナージの確保
② 良好な創傷治癒の実現
という、一見相反する二つの課題が同時に存在する。この二点こそが、肛門手術における最も本質的かつ特徴的なテーマである。

3.2 クランプトレーザー法の治療概念と手術創の特徴

クランプトレーザー法では、痔核を「皮膚および粘膜下に存在する病変」として捉え、余剰となった皮膚・粘膜のみを痔核とともに切除する。 正常な上皮組織は可能な限り温存することを原則とし、肛門の形態および機能の保持を重視した手術概念に基づいている。本術式における術後創部は形式上は開放創であるが、肛門が閉鎖された安静時には、自然に創が閉鎖される構造を有する。 排便時には肛門の開大に伴い創が一時的に開放され、排便後には再び自然閉鎖される。この動的な創構造により、排便時には十分なドレナージが確保され、非排便時には創が閉鎖されることで創傷治癒が促進される。すなわち、クランプトレーザー法は、ドレナージと創傷治癒という相反しがちな二つの要件を、創の構造そのものによって同時に満たすことを可能とする術式である。

3.3 クランプトレーザー法において重視される「手術創の形」

本術式において特に重視される要素は、「手術創の形」である。
クランプトレーザー法では、開放創でありながら、肛門が閉じた自然な状態では創が閉鎖される形態を目標とする。この創形成を可能にしている技術的要点が、CO₂レーザーを用いたアンダーマイニングテクニックによる痔核郭清である。これにより、正常上皮を温存しつつ、皮下・粘膜下病変のみを的確に除去することが可能となる。
手術創の形成にあたっては、
・肛門閉鎖時に生じる皺(皮膚のシワ)
・皮膚割線
・肛門の形状および臀溝の深さ
といった形態的・機能的要素を考慮する必要がある。そのため、肛門外縁に至る創形成(従来いわゆるドレナージ創と呼ばれるもの)は、☆痔核切除後に行われる。この点は、肛門外縁の切開から手術を開始するミリガン・モルガン法とは本質的に異なる。

3.4「ドレナージ創を作る」のではなく、「創を整える」という考え方

クランプトレーザー法では、「ドレナージ創を形成する」という表現は用いない。代わりに、「ドレナージが有効となるように手術創を形成する」という表現を採用している。これは単なる言葉の違いではなく、肛門手術創をどのように捉えるかという思想の違いを反映したものである。 すなわち、ドレナージのためだけに創を作るのではなく、十分なドレナージと早期創傷治癒を両立させるために、創を形態的・機能的に整えるという概念である。

3.5 結語

クランプトレーザー法は、肛門手術創における二大テーマである「ドレナージ」と「創傷治癒」を、創の形態と排便という動的構造によって同時に解決しうる術式である。 それは単なる手技上の工夫にとどまらず、肛門手術そのものの考え方を再定義する試みであり、今後の肛門外科手術の在り方に一石を投じる治療概念であると考えられる。

4.「マリリンの唇」

クランプトレーザー法の特徴的な手術創
開放創なのに閉鎖している

① 学術的表現案(正式)として2つの名称を検討中

機能的準閉鎖型開放創(functionally semi-closed open wound)
または、より解剖・生理学的に踏み込む場合
肛門機能依存性準閉鎖型開放創(anal function–dependent semi-closed open wound)

② 補足説明文(脚注)

本術式における手術創は、形態学的には開放創であるが、肛門閉鎖時には皮膚・粘膜温存により、創縁が軽度に接する準閉鎖状態を呈する。 また、排便時や腹圧負荷時には、肛門の生理的開大に伴い創縁が自然に開放され、 十分な排液・ドレナージが確保される。 すなわち本創形態は、 肛門の「開閉機能」を創形成に組み込んだ 機能的に制御された開放創(※)であり、従来の持続的離開型開放創(ミリガンモルガン法)とは本質的に異なる。
機能的に制御された開放創(functionally semi-closed open wound)
または※ 肛門機能依存性準閉鎖型開放創(anal function窶電ependent semi-closed open wound)
(私は俗称として「マリリンの唇」と表現してきたが、学術的には上記のように定義される。)

③ 質疑応答 Q&A

テーマ:「開放創なのに、なぜ創傷治癒が早いのか」

Q1:本術式は開放創であるにもかかわらず、創傷治癒が早いとされているが、その機序は何か。

A1:本術式の創は、従来の「常時離開する開放創」とは異なり、肛門閉鎖時には創縁が軽度に接する準閉鎖状態を呈するという特徴を有している。
これにより、
・安静時:創面の創傷治癒が促進される
・排便時:生理的開大により十分なドレナージが確保される
という二つの状態が時間的に切り替わる。この"動的創形帯(dynamicwoundconfiguration)"が、良好な排液と早期治癒を両立させていると考えられる。

Q2:ドレナージが不十分になるリスクはないのか。

A2:肛門は日常生活において必ず開閉運動を繰り返す器官であり、排便時や腹圧負荷時には創縁は必ず開放される。
そのため、
ドレナージが完全に遮断される状況は生理的に起こり得ない。

むしろ、常時離開した開放創と比較して、 不必要な乾燥による炎症が抑制される点で、 感染リスクは低減されていると考えられる。
※創傷治癒の過程においては適度に湿潤した環境が良い

Q3:なぜ従来の半閉鎖法や全閉鎖法ではなく、本創形態を選択したのか。

A3:半閉鎖・全閉鎖法は創傷治癒を早める一方で、 排液不良による感染や血腫形成のリスクを内包する。
一方、本術式では閉鎖操作を加えることなく、機能的に準閉鎖状態を形成できるため、
・縫合による虚血
・縫合部破綻
・創感染

といった問題を回避できる。
すなわち、縫合に依存しない早期の創傷治癒(創閉鎖)が可能となる点が大きな利点である。

Q4:創縁が接することで、癒着や狭窄を生じる可能性はないのか。

A4:皮膚・粘膜を温存しているため、排便時には創は開放されるので癒着や肛門狭窄を生じる事は無い。
実際、長期成績においても臨床的に問題となる癒着や狭窄は認めていない。

Q5:この創形態は、肛門という特殊な臓器だから成立するのではないか。

A5:その通りであり、
本術式の創形態は肛門の排便の機能を考慮したものである。
肛門は、
・常時緊張状態(閉鎖)
・排便による間欠的な開放

という特殊な生理機能を有しており、この機能を積極的に利用することで成立する創形態である。
そのため、痔核手術以外の肛門外科領域(裂肛、痔瘻/肛門周囲膿瘍)においても合理性の高い創形成である。

Q6:「開放創=治癒が遅い」という従来概念を否定するものか。

A6:本術式はその概念を否定するものではない。

あくまで、
"「常時離開する開放創」"と
"「機能的に制御された開放創」"は区別して考える必要がある、という立場である。
また、後者においては、 適切な条件下であれば早期治癒と低侵襲性が両立し得ることも示唆している。

5.CO₂レーザーメスと電気メスにおける組織損傷の質的差異

エネルギー伝達様式および創傷治癒への影響

5.1 はじめに

外科手術において切開・止血デバイスの選択は、術中操作性のみならず、術後疼痛、創傷治癒、瘢痕形成に大きな影響を及ぼす。特に肛門手術では、肛門は感覚神経が豊富で瘢痕形成が機能障害に直結しやすいため、"組織損傷の「質」"が重要となる。本稿では、CO₂レーザーメスと電気メスについて、エネルギー伝達様式、組織損傷範囲、創傷治癒への影響の観点から比較検討する。

5.2 エネルギー伝達様式の違い

5.2.1 CO₂レーザーメス

CO₂レーザーは波長10.6μmの遠赤外線レーザーであり、水分にほぼ100%吸収されるという特性を有する。生体組織に照射されたエネルギーは表層で急速に吸収され、深部へ熱が伝播しにくい。

この結果、組織は"瞬間的な蒸散(vaporization)"を起こし、周囲組織への熱拡散は極めて限定的となる。

5.2.2 電気メス

電気メスは高周波電流を組織内に通電し、組織抵抗によって発生するジュール熱を利用して切開・凝固を行う。電流は組織内を一定範囲にわたって流れるため、熱は深部および側方へ拡散しやすい。

その結果、組織は"焼灼(coagulation, carbonization)"され、切開線周囲に広範な熱障害を生じやすい。

5.3 組織損傷範囲(熱変性層)の比較

5.3.1 CO₂レーザーメス

CO₂レーザーによる熱変性層は非常に薄く、一般に数十〜100μm程度とされている。
手術創と正常組織との境界は明瞭であり、壊死層は最小限に抑えられる。

5.3.2 電気メス

電気メスでは熱変性層が比較的厚く、数百μmから場合によってはmm単位に及ぶことがある。炭化層や蛋白変性組織が残存しやすく、手術創と正常組織の境界が不明瞭となる。

このため、手術創周囲に潜在的な組織ダメージが残存する点が特徴である。

5.4 創傷治癒への影響

5.4.1 CO₂レーザー

周囲組織の損傷が最小限であるため、術後の炎症反応は軽度にとどまる。
その結果、
• 創傷治癒の促進
• 瘢痕形成の抑制

が期待される。
肛門手術においては、術後疼痛、浮腫、瘢痕狭窄のリスク低減につながる。

5.4.2 電気メス

壊死組織や炭化層が残存しやすく、炎症反応が遷延する傾向がある。
これにより、
• 創傷治癒の遅延
• 硬い瘢痕形成

を生じやすく、肛門手術では術後疼痛、違和感、治癒遷延の原因となることがある。

5.5 肛門手術における適応の考察

肛門周囲組織は血流が繊細で感覚神経が豊富であり、瘢痕形成が裂肛や狭窄といった難治性病変へ進展しやすい解剖学的特徴を有する。
• 電気メスは止血能力に優れる一方で、熱損傷による創傷治癒への悪影響が問題となる場合がある。
• CO₂レーザーは止血力こそ電気メスに劣るものの、切開・蒸散と同時に必要十分な止血を行いながら、良好な創傷治癒を得やすい。

5.6 結論

CO₂レーザーメスは、水分に選択的に吸収される特性により、病変部のみを精密に蒸散させ、周囲正常組織への熱損傷を最小限に抑えることが可能である。 一方、電気メスは優れた止血能力を有する反面、熱が広範囲に及びやすく、組織損傷が大きくなるため、創傷治癒はCO₂レーザーと比較して遅延する傾向がある。

とくに肛門手術においては、組織損傷の質を重視したデバイス選択が、術後QOLの向上に寄与すると考えられる。

手術写真と動画

手術動画
手術動画 【6:35】

50代女性 内痔核

病院に行くのが恥ずかしく、1年間市販薬で対応していた。違和感が続きストレスとなり、受診を決意された。

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6時方向痔核切除の写真
❷ 6時方向痔核切除
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1時方向痔核切除の写真
❸ 1時方向痔核切除
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手術直後の写真
❹ 手術直後
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の写真
❺ 手術翌日
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❻ 手術後1週間
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❼ 手術後3週間

50代男性 嵌頓痔核

以前から排便時に脱出し指で戻していたが、ある日外出先で激しい痛みと出血があり、慌てて受診された。

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❷ 痔核脱出時
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❸ 6時方向痔核切除
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❽ 手術後3週間

30代男性 内痔核4度

座ると常に違和感があり、長時間のデスクワークでズキズキと痛む。職場に知られたくなく、日帰り手術を希望して受診された。

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❽ 手術後1週間
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❾ 手術後3週間

30代男性 内痔核3度

入浴時に腫れに気づき、ある日排便時に大量出血。不安で受診し、検査で他の病気がないと分かり手術を決意された。

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手術前
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3時方向痔核切除
❷ 3時方向痔核切除
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9時方向痔核切除
❸ 9時方向痔核切除
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❹ 手術直後
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❺ 手術翌日
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❼ 手術後3週間

30代女性 嵌頓痔核

突然しこりと激痛が出現。傷跡が残る不安から受診を避けていたが、レーザー手術を知り受診・手術を希望された。

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❷ 痔核郭清、切除
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❹ 3時方向肛門ポリープ
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60代女性 内痔核3度

出産後から脱出する痔を戻すのが日常。若い頃は市販薬で対応していたが、加齢で悪化。家族から日帰り手術を勧められ受診された。

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40代男性 内痔核4度

数年前から排便時の違和感や痛みがあり、仕事を休めず手術を諦めていた。家族に日帰りで翌日復帰できると聞き受診された。

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❷ 7時方向痔核切除
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60代男性 内痔核3度

他院でジオン注を受けたがスキンタグは未治療。拭き取りにくく出血・かゆみが続いたため、スキンタグも治せると知り受診された。

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70代男性 内痔核3度

排便後に毎回脱出し指で戻していたが、最近は日常的に脱出するように。他院で高齢を理由に薬のみの治療だったが、ストレスから受診された。

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50代女性 内痔核4度

若い頃から痔があり、術後の痛みや後遺症が不安で手術を避けていた。痛みが少なく機能温存できると知り、手術を希望された。

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8時方向痔核切除の写真
❷ 8時方向痔核切除
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7時方向痔核切除の写真
❸ 7時方向痔核切除
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4時方向痔核切除の写真
❹ 4時方向痔核切除
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11時方向痔核切除の写真
❺ 11時方向痔核切除
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❻ 手術直後
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手術翌日の写真
❼ 手術翌日
矢印
手術後1週間の写真
❽ 手術後1週間

70代男性 内痔核3度

排便時に出血があり外出が億劫に。手術を諦めていたが、友人の手術経験を聞いて受診された。

矢印

手術前の写真
❶ 手術前
矢印
7時方向痔核切除の写真
❷ 7時方向痔核切除
矢印
手術直後の写真
❸ 手術直後
矢印
手術翌日の写真
❹ 手術翌日
矢印
手術後1週間の写真
❺ 手術後1週間
矢印
手術後3週間の写真
❻ 手術後3週間

50代男性 内痔核3度

定期的に痔が悪化し市販薬で対応していたが、年々症状が悪化。長期の休みが取れず手術できなかったが、翌日から運転可能と聞き受診された。

矢印

手術前の写真
❶ 手術前
矢印
3時方向痔核切除の写真
❷ 3時方向痔核切除
矢印
4時方向痔核切除の写真
❸ 4時方向痔核切除
矢印
手術直後の写真
❹ 手術直後
矢印
手術翌日の写真
❺ 手術翌日
矢印
手術後1週間の写真
❻ 手術後1週間
矢印
手術後3週間の写真
❼ 手術後3週間
痔核手術動画
手術動画 ❶ 【01:04】
痔核手術動画
手術動画 ❷ 【6:35】
痔核手術動画
手術動画 ❸ 【6:49】

治療の流れ

初診の流れ

午前の手術
予 約 オンライン、LINE、電話
受 付 問診票の記入
診 察 医師の診察
検 査 手術希望の方は
術前検査

午前の手術

午前の手術
8:00 来 院
準 備
(着替え、麻酔準備)
手 術
安 静
(個室で3〜4時間程)
12:00 〜 13:00 帰 宅

午後の手術

午後の手術
12:30 来 院
準 備
(着替え、麻酔準備)
手 術
安 静
(個室で3〜4時間程)
17:00 〜 18:00 帰 宅

手術後の通院

手術後の通院
翌 日 通 院
1週間後 通 院
3週間後 通 院
5週間後 痔瘻の方のみ
7週間後 ジオン注射の方のみ

手術後の生活

一般的な痔の手術では、手術後の痛みや出血のリスクのため安静が必要とされてきましたが、当院で行われる低侵襲手術では翌日から普段通りの生活・仕事(肉体労働も可)行って構いません。生活リズムを崩さず動くことが術後経過を良好なものとします。

仕事は翌日から肉体労働も含めて行って構いません。
仕事は翌日から肉体労働も含めて行って構いません
飲酒と香辛料などの刺激物は2週間避けていただきます。
飲酒と香辛料などの刺激物は2週間避けていただきます
運動は2週間避けてください。
運動は2週間避けてください

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