日帰りができる理由

肛門疾患に対する外科的治療は、従来は入院加療が一般的でした。徹底した低侵襲化した手術技術と周術期管理のより、進行列を含め日帰りで手術をおこなっています。

低侵襲手術の指標

術後痛みが少ない 手術時間が短い
出血量が少ない 麻酔侵襲が少ない
手術創が小さい 手術範囲が少ない

低侵襲手術の技術と効果

下記の技術を行い低侵襲手術を実現しています。

CO2レーザーメス 組織損傷が少なく、出血量少なく複雑な病変に対し容易に対応ができるため手術時間が短くできる。
痔核郭清とアンダーマイニング技術 手術創を小さくでき、術後の腫れも少なく痛みも少なく、根治性も高まる。
仙骨硬膜外麻酔ボーラス注入法 麻酔薬の量を少なくでき、また麻酔の立ち上がり早く、麻酔侵襲が少なくて済む。
括約筋オーバーストレッチ 肛門括約筋の緊張を緩和し、術後の痛みが少なくスムーズな排便ができる。
ドレナージ創は最後に形成 ドレナージ創の形成は、主病変を切除した後に行う。 肛門の自然な皺に沿って創を形成できるため、良好な創傷治癒が得られ、術後の痛みも少なくなる。
展開テープ、ストレッチ&リリース法 肛門の閉じている状態と開いている状態を確認しながら手術を行えるため創傷治癒の良好な手術創を形成でき術後の痛みが少なくなる。
手術とジオン注射の併用 手術範囲を少なくすることができ手術侵襲が軽減され、術後出血のリスクが大幅に軽減しまた根治性も上がる

低侵襲手術の種類

手術名 術 式
痔核根治手術
詳細
クランプトレーザー法
裂肛根治手術
詳細
レーザー周堤除去
オーバーストレッチ法
痔瘻根治手術
詳細
ダブルドレナージ法
括約筋温存開放術
スキンタグ手術
詳細
レーザートレース法

技術と効果の詳細

CO2レーザーメスの2つの長所

レーザーメスは 「出血が少なく、体への負担を抑えながら、複雑な病変にも対応できる」 肛門疾患において極めて有用な手術機器です。

CO2レーザーメスの特徴
CO2レーザーメスの特徴

① 出血を抑えて体への負担を少なく

レーザーの光は、焦点を合わせるかどうかによって性質が変わります。
・焦点が合った光(フォーカスビーム):組織を傷つけにくく切除できる
・焦点を少しずらした光(デフォーカスビーム):止血効果が高い
この2つをうまく使い分けることで、出血を最小限に抑え、周囲の組織を傷めない安全な手術が可能です。
そのため、クランプトレーザー法による痔核切除や、痔瘻の肛門括約筋の剥離(ダブルドレナージ法)でも、ほとんど出血せずに行えます。

② 複雑な形の病変もきれいに切除

レーザーメスは非接触で照射するため、直接メスを病変に当てなくても、光でなぞるだけで切除ができます。
これにより、形が複雑な病変でもトレースすることで容易にかつ精密に切除手術できるのが大きな特徴です。
たとえば、
・デコボコした肛門の皮膚(スキンタグ)
・慢性的な裂肛でできた硬いしこり(見張りイボや周堤)
・肛門括約筋の間を走行する複雑な痔瘻
こうした難しい病変も、レーザーなら繊細かつ正確な手術ができます。

アンダーマイニング技術
による痔核郭清

痔核の日帰り手術において痔核郭清とアンダーマイニング手技は要となる重要な技術です。 皮膚をできるだけ残して中の病変だけを摘出するため、手術後の傷は小さく、腫れや痛みを大幅に軽減します。

痔核郭清とは、皮膚や粘膜(表皮)を失わずに、その下にある痔核のみを丁寧に摘出する方法です。

痔核郭清
小さな創から皮下粘膜下層を剥離する
痔核郭清
小さな創から皮膚粘膜の下にある痔核を取り除く

一般的な痔核手術では表皮ごと痔核病変を取り除くため、切除範囲が広くなりやすく、肛門の開閉機能を損なうリスクがあります。 一方、痔核郭清は表皮を温存できるため、肛門機能を守りながら根治を目指せる点が大きな特徴です。

この痔核郭清を支えるのが、アンダーマイニング手技です。アンダーマイニングとは、表皮を残したまま、その直下の皮下組織を繊細に剥離して病変(痔核)を取り除く技術であり、過分な皮膚.粘膜の切除を避けつつ、創傷治癒を良好に導きます。これにより、術後の痛みや腫れが大幅に軽減され、日帰り手術が可能になります。

さらにCO2レーザーメスのフォーカスビームを用いることで、組織への侵襲が少なく、精密な剥離操作が容易になります。これにより、「アンダーマイニング技術を最大限に活かした痔核郭清」が実現し、進行した痔核に対しても肛門機能を損なうことなく根治性を高めることができます。日帰り手術の要となる技術です。

仙骨硬膜外麻酔ボーラス注入法

少ない麻酔薬の量で麻酔の立ち上がり早く、麻酔からの離脱もスムーズで麻酔侵襲が少なくて済む。

仙骨硬膜外麻酔

仙骨硬膜腔に麻酔薬を注入

仙骨硬膜外麻酔

麻酔薬を圧力をかけて注入する方法です。麻酔の効果が早く、麻酔量も一般的な半分の量済み体への負担が少ない麻酔方法です。
一般的に2%の濃度の麻酔薬を使用しますが、ボーラス注入法では1%の濃度を使用します。さらに、麻酔の立ち上がりの効果は優れ、仙骨硬膜外麻酔で稀に起こる「*片効き現象」も起こりません。
また腰椎麻酔後に発症する頭痛(低髄圧性頭痛)も起こりません。低濃度の麻酔薬で効果も良く、体に優しく日帰り痔手術に適切な麻酔法と考えます。
当院の痔手術の全ては仙骨硬膜外麻酔ボーラス注入法で行われています。
※片効き現象とは麻酔の効果が片側だけに効く現象。

括約筋オーバーストレッチ手技

肛門括約筋の緊張を緩和し、術後の痛みが大幅に軽減されスムーズな排便ができる。創の治りが早くなる。

オーバーストレッチ
オーバーストレッチ

肛門術後に起こる痛みの主原因は括約筋の緊張と攣縮によるものです。この現象はストレスが起こった場所の筋肉を緊張させ体を守る反射、筋性防御反応に起因します。
筋肉は緊張すると痛みを発し、攣縮を起こすと耐えがたい強い痛みを起こします。(肩こりやこむら返しをイメージしてください)
下部直腸から肛門外縁の臀部に関わる筋肉まで愛護的にしっかりとオーバーストレッチ(過伸展)を行うことで、肛門括約筋の緊張と攣縮を予防でき、術後に痛みのない排便ができます。

ドレナージ創は最後に形成

ドレナージ創の形成は、主病変を切除した後に行う。 肛門の自然な皺に沿って創を形成できるため、良好な創傷治癒が得られ、術後の疼痛も軽減される。

ドレナージ創
内痔核を切除
ドレナージ創
内痔核切除後にドレナージ創を形成

肛門手術では、翌日から排便が始まるため、創部が感染しないように工夫が必要です。そのため、便や肛門内の浸出液・血液などが速やかに肛門外へ排出されるように「ドレナージ創(排泄創)」を形成します。これにより、良好な創傷治癒が得られ、肛門手術においては非常に重要な手技となります。

一般的な痔の手術では、このドレナージ創を先に形成し、その後に主病変を切除する方法がとられます。
一方、当院では主病変の手術を終えた後、肛門が自然に閉じた際のシワに合わせてドレナージ創を形成します。

この方法により、術後の創部の治りがより良好となり、痛みも少なく、治癒後の傷跡も自然で目立ちにくくなります。

展開テープの
ストレッチ&リリース法

肛門の閉じてる状態と開いている状態を確認しながら手術を行えるため創傷治癒の良好な手術創を形成できる。

肛門展開テープの伸展
ストレッチ
肛門展開テープの緩和
リリース
肛門展開テープの伸展
肛門展開テープの緩和

手術中は肛門を十分に開口させるために肛門の左右に貼った展開テープを手術終了まで伸展した状態で行うのが一般的です。術後の肛門の状態が想定できず、術後に歪みの皮膚(スキンタグ)を形成したりすることも少なくありません。
術中に展開テープを進展と解除を行ない肛門が閉じた状態を想定して手術を行うことで、術後の肛門の形(美観)や肛門開閉の機能にとっても有効です。手間を惜しまず、展開テープのストレッチ&リリース法を行うことが重要と考えます。
ドレナージ創の形成にとっても重要な技術です。(ドレナージ創はを最後に形成の項.参照)

手術とジオン注射の併用療法

切除範囲を少なくすることができ、手術侵襲が軽減され、術後出血のリスクが大幅に軽減し根治性も高まる。

痔核の根部を結紮する写真
痔核の根部を結紮
口側の痔核に対してジオン注射を施行する写真
口側の痔核に対してジオン注射を施行
ジオン注射後に痔核を切除する写真
ジオン注射後に痔核を切除

ジオン注射は内痔核に直接注射して内痔核を縮小させる治療法です。手術と併用することにより切除範囲は縮小して手術侵襲は軽減できます。また最大の合併症である術後出血の予防に有効です。ジオン併用療法後(クランプトレーザー法)の出血の合併症はゼロです。日帰りの痔手術には必須のものと考えます。
クランプトレーザー法は痔核切除+痔核郭清(摘出)+ジオン注射の併用療法です。

手術後の安静の考え方

術後翌日からの仕事に制限をしない

術後翌日からの仕事に制限をしない
術後翌日からの仕事に制限をしない

術後安静の考え方も以前とは大きく変化しています。消化器外科、整形外科、脳神経外科、多く診療科で早期離床が行われています。肛門外科も同様です。日常生活を通常通りに行うことがリハビリとなり良好な術後経過を導きます。当院では肉体労働を含め、翌日からの仕事に制限をしていません。

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