院長コラム

院長コラム第6回

CO2レーザーメスと電気メス 組織損傷の「質」の違い

① エネルギーの伝わり方の違い

CO2レーザーメス 電気メス

• 波長 10.6μm
• 水にほぼ100%吸収される
• 表層でエネルギーが止まり、深部へ広がらない

→ 組織は
「瞬間的に蒸散(vaporization)」
周囲への熱拡散が極めて少ない

• 高周波電流を組織に流す
• 組織抵抗によって発熱
• 電流が流れた範囲に沿って熱が広がる

→ 組織は
「焼灼(coagulation・carbonization)」
深部・側方への熱障害が起こりやすい

② 組織損傷の範囲(熱変性層)

CO2レーザーメス 電気メス

• 熱変性層:非常に薄い(数十〜100μm程度)
• 手術創と正常組織との境界が明瞭
• 壊死層が最小限

• 熱変性層:比較的厚い(数百μm〜mm単位)
• 炭化層・蛋白変性が残りやすい
• 手術創と正常組織との境界が不明瞭

電気メスは「手術創の周囲にダメージを受けている」

③ 創の治癒への影響

CO2レーザーメス 電気メス

• 周囲組織の損傷が少ない
• 炎症反応が軽い
• 創の治癒が早い
• 瘢痕形成が少ない
• 肛門手術では

→ 術後疼痛・浮腫・狭窄リスクが低い

• 壊死組織が残りやすい
• 炎症が長引く
• 創治癒が遅れがち
• 瘢痕が硬くなりやすい
• 肛門手術では

→ 疼痛・違和感・治癒遷延の原因になることがある

④ 肛門手術との相性

肛門周囲は
• 血流が繊細
• 感覚神経が豊富
• 瘢痕形成(裂肛)を起こしやすい→難治創になりやすい

■電気メス

→「止血は強いが、創の治癒はさまたげられる

■CO2レーザーメス

→「止血力は電気メスに比較して弱いが止血しながら、良好な創の治癒が可能」

まとめ

CO2レーザーメスは、水分に吸収される性質により、必要な部分だけを蒸散させ、周囲組織への熱損傷を最小限に抑え病変を除去することができます。

一方、電気メスは止血力に優れる反面、熱が周囲に広がりやすく、組織損傷が大きくなる創の治癒がレーザーに比較し遅い傾向があります。

文章責任 八王子クリニック 井藤尚文

痔ってなあに?
〜誰でもわかる痔の基礎知識〜

基礎知識から具体的な治療法、日帰り手術まで イラストや図解で分かりやすく解説!


八王子クリニック院長 井藤尚文 著


幻冬社より発売 ¥1,300 (税抜)

痔ってなあに?