院長コラム
院長コラム第7回
肛門手術創の理想形に関する考察
―「マリリンの唇」による半開放創の概念―
【背景】
肛門は便が通過する汚染環境下にあり、術後創は常に感染リスクを伴う。そのため従来は感染予防を目的に開放創が原則とされてきた。しかし開放創は治癒遅延や疼痛増強を招く。一方、閉鎖創は治癒促進が期待できるが、ドレナージ不全による感染の危険を内包する。
【目的】
開放創と閉鎖創の利点を両立する創形態を理論的に検討する。
【方法・考察】
理想的創は、完全開放でも完全閉鎖でもなく、「わずかに開放された状態」と考える。本形態を比喩的に Marilyn Monroe の半開口の唇になぞらえ「マリリンの唇」型半開放創と呼称する。 肛門は排便という周期的運動を有し、排便が動的ドレナージとして機能する。
創縁(マリリンの唇)を整えるためには痔核においては、アンダーマイニング手技による*「痔核郭清」が重要であり、また、CO₂レーザーは熱侵襲が少なく、中空(非接触性)からの操作による微細な創縁調整が可能で、本形態形成に有用である。
※痔核郭清とは、皮膚・粘膜下に存在する痔核のみを除去する手技である。皮膚・粘膜の切除は余剰部分のみにとどめるため、肛門の開閉に必要な皮膚・粘膜は温存される。
【結論】
肛門手術における創設計(形成)は「開くか閉じるか」の二元論ではなく、「どの程度開放するか」の設計思想にある。
「マリリンの唇」こと、半開放創は感染制御と治癒促進を両立し得る理論的形態と考える。
文章責任 八王子クリニック 井藤尚文


