院長コラム

院長コラム第9回

クランプトレーザー法における基本概念

― 小開放創理論と痔核郭清概念 ―

はじめに

従来の痔核根治術は、ミリガン・モルガン法に代表されるように、痔核を皮膚・粘膜ごと一塊として切除し、大きな開放創を形成することを基本概念として発展してきた。

その背景には、「肛門手術創は便の通過による感染環境下にあるため、十分なドレナージを確保する目的で大きな開放創が必要である」という考え方が存在していた。

しかしながら、肛門は単なる静的構造物ではなく、排便時に周期的な開閉運動を有する“動的臓器”である。この生理学的特性を再考すると、従来のような過大な開放創形成は必須ではない可能性がある。

クランプトレーザー法は、この肛門の動態生理および痔核病態を再解釈することにより、小開放創による低侵襲痔核根治術を実現するために構築された術式である。

1.小開放創理論

― “マリリンの唇”概念 ―

クランプトレーザー法では、肛門創部を「軽く接する程度の小開放創」として形成する。この創形態を、本術式では“マリリンの唇”と表現している。

従来法においては、創感染予防の観点から大きな開放創形成が重視されてきた。しかし、肛門は排便時に自然な開閉運動を繰り返すため、この動的運動自体が創部ドレナージ機構として機能する。

すなわち、必要以上の開放創を形成せずとも、十分な排液性および感染予防効果が得られると考えられる。

小開放創形成によって、

• 術後疼痛の軽減
• 創傷治癒期間の短縮
• 浮腫・出血の軽減
• 早期社会復帰
• 肛門機能温存

が可能となる。

2.痔核郭清概念

― 痔核本体と皮膚粘膜の分離 ―

痔核の本態は、皮膚・粘膜そのものではなく、皮膚粘膜下層に存在する静脈叢のうっ血および静脈瘤化である。

一方、表層の皮膚・粘膜腫脹は二次的変化に過ぎない。

従来の痔核切除術では、痔核本体と表層皮膚粘膜を一塊として切除する術式設計が一般的であった。しかしクランプトレーザー法では、

• 「痔核本体(静脈瘤)」
• 「二次的に腫脹した皮膚粘膜」

を明確に区別して処理する。

この概念の中心となる技術が、「痔核郭清」である。

痔核郭清とは、
皮膚粘膜を可能な限り温存しながら、皮膚粘膜下層に存在する痔核本体のみを選択的に整理・処理する技術である。(アンダーマイニング技術)

ミリガン・モルガン法においても痔核郭清操作自体は存在するが、従来法では大きな痔核切除が前提であるため、その位置づけは補助的操作に留まっていた。

これに対し、クランプトレーザー法では、痔核郭清こそが術式の中核技術となる。

3.CO2レーザーの意義

痔核郭清を低侵襲かつ精密に行うためには、CO2レーザーの使用が極めて重要である。

CO2レーザーは

• 高い蒸散能
• 精密切開能(非接触性での切開可能)
• 適切な止血能力
• 周辺組織への熱損傷軽減

を有する。

これにより、皮膚粘膜を温存しながら痔核本体のみを選択的に処理することが可能となり、小開放創形成を実現できる。

すなわち、クランプトレーザー法における低侵襲性は、
「痔核郭清概念」
および
「CO2レーザーによる精密操作」
の組み合わせによって成立している。

4.結語

クランプトレーザー法は、
肛門を“動的臓器”として再定義し、
痔核を“皮膚粘膜下層病変”として再解釈することで、
従来の痔核根治術概念を刷新する術式である。

本術式は、

• 小開放創形成
• 術後疼痛軽減
• 創傷治癒促進
• 早期社会復帰
• 肛門機能温存

を目的として構築されており、
「必要最小限の侵襲で、最大限の機能温存を図る」
という、新しい痔核外科治療概念を提示するものである。

文章責任 八王子クリニック 井藤尚文

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